こんにちは。
靴修理人 兼 シューフィッター 兼 靴マニアです。
今日はみなさん一度はあこがれるであろう
オーダーメードの靴のお話をします。
実はわたしも以前はつくっていました。
紳士靴のかちっとしたものから、
婦人靴のふにゃっとしたものまで。
奥さんにもフォーマル用・カジュアル用に数足つくりました。
靴をつくるのに必要な道具はいまだに一式もってますし、
木型も20㎝から28㎝まで全部そろってます。
今ではホコリをかぶってますが・・。
今は靴づくりは完全に休止してます。
なぜオーダーメードの靴をつくるのをやめたかというと、
まったくシンプルに
「わりにあわないから」
の一言です。
オーダーメードの靴って、いくらぐらいだとイメージしますか?
10万?30万?
いえ、それだと全然わりにあいません。
「原価と利益」だけならギリ10万でいけると思いますが、
「拘束される時間」がはんぱじゃない。
依頼者と話し合って、デザインきめて、足をはかって、
歩き方を観察して、木型を盛ります。
ここまでで1週間はかかります。
まるっきりほかの仕事を断って集中しても、3日はかかります。
そこから合皮で仮靴つくって、フィッティングして、
まだ木型修正して、型紙修正して、革屋にいきます。
革屋でも、革は「1足分だけ」では決して売ってくれません。
まるっと一枚買わなければいけないんです。
革を選別するときも真剣勝負です。一枚選ぶのに2時間は絶対かけます。
天然ものなので、あたりはずれが必ずあります。
きまったら革屋と値段交渉して、丸めてもらって電車で帰って、
食卓テーブルの上で革を裁断。
とばしますが、そのあと縫製・つりこみ・底付け・仕上げ、
最後に納品して集金するまでを全部ひとりでやります。
1か月~3か月は拘束されます。
時給に換算すると、1か月で完成させた靴なら30万+原価。
3か月かかった靴なら90万+原価がかかります。
これでやっと相応の利益がでます。
でも、そんな靴、だれも買わないですよね。
なので、結局は10万以上いただいたことはありません。
めちゃくちゃ損してます。
オーダーメードをやめてる理由はほかにもあります。
長くなるので明日へつづきます。