こんにちは。
靴修理人 兼 シューフィッター 兼 靴マニアです。
20~30代のころ、ちょくちょく仕事のかたわら
オーダーメードの靴をつくっていました。
いちばんたいへんだったのは、糖尿病の外人さんで、
英語だけで(むこうは日本語がわからない)オーダーをうけたときです。
イギリスのノーサンプトンで1年すごしたことがあったので、
なんとかいけました。
それに本当は糖尿病のケースは病院をとおして、
義肢装具士がつくらなければいけないそうです。
ただこの外人さんは諸事情があり、病院とも義肢装具士さんとも
おりがあわず、いつのまにか私がつくることになりました。
1足目を気にいってくださり、
結局もう1足と室内用のスリッパまでつくりました。
結果からいうと、ものすごく喜んでくれました。
ほとんど外に出られなかったのが、台風の日まで
電車を使って移動できるようにまでなり、
私もうれしかったです。
1足目に費やした時間は約4か月。
2足目とスリッパはそれぞれ約2か月でした。
きのうの計算だと、それぞれ120万円、60万円で
ようやくトントンになる計算ですね。
これは今ふりかえるからわかるんです。当時はバカでしたねー。
結局そのかたもすごく裕福というわけではなかったので
靴は7万円、スリッパは2万円で了承しました。
苦い思い出です。
大大大×10くらいの赤字でしたから。
今なら心を鬼にして、はじめから断ったか、値段をごり押ししたはずです。
それ以来オーダーメードの靴づくりはやめました。
知人にももちろん靴づくりをなりわいにしている人たちも
いましたが、
30人ほどの知り合いのうち、20年たってまだ靴づくりで
生計を立ててる方は1人だけです。
あ、花田さんではありません(笑)。
その方も靴づくりだけでは全然食っていけないので、
基本は靴修理と靴づくりのワークショップを並行して
やられています。
ちなみに、
あの花田さんもけっこう叩かれましたが、
まあ納期がおそいのはたしかに悪いと思いますが、
「値段のわりにクオリティが低い」という意見は
前述した背景があったはずです。
かりに彼が10年とかイタリアで修業したとしても、
3か月納期の靴を60万円でつくることは
日本では絶対にできません。
さて。
今の世の中、もし健常者の方ならオーダーメードしなくても
合う靴は「絶対に」あります。
オーダーメードが1足最低30万かかると思ったら、
10万円の既成靴が3足買えるわけですよね。
ちょっと考えてみてください。
「10万円の靴でも本当に足に合わないでしょうか?」
既成靴に10万円以上出せるとなったら、選択肢は無限にひろがりますよ。
エルメスは試しましたか?
ベルルッティは試しましたか?
ヴィトンのスニーカーは試しましたか?
みたいな話になってくるんです。
もっというと、
「歩くための靴」
と
「魅せるための靴」
を
混同していませんか?
また話が長くなっちゃいましたね。
キンキンに冷えたスーパードライが待ってるので、
また明日!