元・靴設計士 兼 現・靴修理人 兼 シューフィッター 兼 靴マニアのコマツです。

東京某所で靴修理やってます。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間ほど靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと書いていきます。

149 トリーバーチは直らない。

こんにちは。

靴修理人 兼 シューフィッタ― 兼 靴マニアのコマツです。

今日は前置きなしでいきます。

トリーバーチ」が直らない問題です。

 

人気ありますよねー。

でっかいメダルが付いたバレエシューズは

だれでもみたことがあるでしょう。

店頭だと3万円くらいです。

安くはないですよね。

紳士靴で3万ちょっとだと、

ジャランスリワヤとか買えちゃいますから。

これがしょっちゅう修理にきます。

裏はこんな感じ。

だいたいどのモデルも、

ヒールとソールが分離してない

「一体底」です。

問題が素材。

「TR」とか呼んでるんですが、

「サーモ・プラスチック・ラバー」

の頭文字です。

ラバーと名前はついてるものの、

性質としてはかぎりなくプラスチックに近い。

で、ヒールがけずれて修理に出されても、

なかなか直らない。

商売なので、やりますよ。

やりますけど、めちゃくちゃ面倒で

「直したばかりのヒールがとれた」という

クレームがダントツで多いんです。

革とか普通の合成ゴムなんかは、

接着剤はむかしよりずっと品質がいいので

ま、ふつうにつきます。

TRの場合、接着剤をはじくんです。

なので、直す時は

接着剤をぬるところに

あらかじめ

「アロンアルファ」を一面にぬります。

は?

と思ったでしょ。

「頭痛が痛い」とか思ったでしょ。

アロンアルファを塗って乾燥させると

かちかちの被膜になるんです。

アロンアルファだけでは絶対につきません。

その上に、接着剤を塗ってくっつけます。

一応はつくんです。

ところが問題があって、

トリーバーチって

これくらい曲がるんですよ。

対して、アロンアルファは被膜になると

貝殻のように固くなります。

曲げると・・・割れるんです。

だから修理の時にはお客さんに

「ヒールは直してもとれやすいですよ」と

120%言います。

でも。

3万円の靴がそんなに粗悪品なわけないでしょ、と

ほぼほぼ聞き流されます。

で、案の定クレーム・・ってパターンが

たいへん多い。

たまに革底もありますが、唯一

これならなんでもできます。

でも、革底はあんまり人気がないようで、

よく修理にくるのが

ドライビングシューズ。

これも、基本的にはなにもできません。

やるとしたら1万円以上のオールソールに

なりますが、

ドラシュー特有の軽さ・柔らかさは

完全に消えます。

このパターンもめちゃくちゃ多い。

カカトが秒で削れるパターンです。

正直、これもカカト直しても

すぐ取れます。

 

あと、底ではありませんが

「メダルが歩くたび足に食い込んで痛い」

という相談も多い。

・・・どうしようもありません。

このメダルだけは

「異常に強力な接着剤」でくっついてるので、

取ろうとすると本体がやぶけます。

あと、かかとのギャザー。

「食い込んで痛い」という相談。

・・・・なにもできません。

「中のゴム取って、また縫えないの?」と

おっしゃられても、

ゴム取ったら「咲きすぎたチューリップ」

みたいになって、まったく歩けなくなります。

トリーバーチにかぎらず、

「かかとにギャザー」シューズは

絶対痛いので、買わない方がいい。

ビジュアルでだまされちゃうんですけどね。

ダメです。

最後っ屁になりますが、

トリーバーチはメーカー修理も

ほとんどやってないので、

「おしゃれ靴」として

割り切って履いてくださいね。

それではまた明日!