ここでいう「かたい靴」とは、
イメージでいうと、

こんなのとか、

こんなのとか、

こんな感じのです。
よくみかける「かちっ」とした感じのですね。
3つとも素材はすべて牛の革です。
でもちょっと考えてください。なんで牛の革なのにかたいんでしょう?
革が厚いから?ちがいます。
答えはあとにして、これも牛の革で、もっと厚みありますが、超やわらかいです。


写真にだした5つ、すべて牛革です。
(専門用語でいうと、牛革の中でも「ステア」という分類ですが、ここではどうでもいいです。)
原価も品質もほぼ一緒。なので、
いい革=やわらかい
悪い革=かたい
と思う人が多いんですが、ちがいます。
「この革、しっとりしてるからいいでしょう?」なんて、うちの母親はよく言います。
答えをいうと、もともと革は普通やわらかいんです。
そっちのほうが加工する際も手間もコストもかかりません。
わざわざ足が痛くなるようなかたい革にするには、
表面に樹脂加工(ニスをふきつけるイメージ)をする必要があります。
ニスを塗ると、靴クリームはまったく浸透しません。はじかれます。
なんでそんなマゾなことをするのかというと、
そのぶん多少の雨やドロもはじくからです。
仮によごれても軽く布でふいたりするだけでキレイになります。
セルフで、秒でキレイになります。これはすごいアドバンテージです。
あるいは、スーパーで売ってるような液体の靴クリーム↓

をヌリヌリするだけで簡単にツヤがでます。
「かたい革」はメンテナンスが全部ラクなんです。
(合成皮革にいたっては、水拭き以外なにをやってもムダです。)
逆にいうと、やわらかい革は手入れがすこしめんどうです。
雨とかの水分をめちゃめちゃすいます。汗もすいます。
そのままほうっておくとバクテリアが繁殖して臭くなります。
それを防ぐにはいちいち防水スプレーをかける以外ありません。
さらに上の写真のような液体の靴クリームは、かわくと「かたくなる」特徴があるので、実質つかえません。
つかってもペンキみたいにはがれてきます。なので、

こんな感じの昔ながらのどろっとしたクリームをたまにぬらないと色がぬけます。
都心でしたら、靴修理屋で600~1000円くらいで靴みがきやってるので、
いちいちクリームそろえたり手間のことを考えると
「やわらかい革の靴」は修理屋でみがいた方が絶対的にラクです。
すいていれば作業も10分もかかりません。
これが「かたい革・やわらかい革」のメリットとデメリットです。
さて、ここで意地の悪い質問です。
「かたい革」は修理屋でみがいたらどうなるでしょうか?
答えは、「ごまかされます」。
企業秘密でいえませんが、私自身もみがきでお金をもらっている以上、「ごまかす」達人です。
一見、傷も消えて色もはいって、ピカピカにみえます。
でも厚化粧をしているだけなので、ピカピカは1週間ももちません。
逆にいえば、
「これから面接!」「これから結婚式!」みたいなかたにはおすすめです。
ひとこと「これから面接です!」と言ってくれれば、
シンデレラみたいに「時間制限付き」でビカビカに光らせてみせます。
それ以外の通常運転のかたは、ウエットティッシュでふいて、

スーパーにあるようなこういうスポンジで充分ひかります。
まとめると、
「勝負靴」はかたい革のがいい。
「歩く靴」ならやわらかい革がいい。
ということですね。
おっと・・ご婦人の靴や、ごついエンジニアブーツはまた全然別なので、
また明日書きます。
では今回はこのへんで!