毎日靴ブログ@元・靴設計士 兼 元・靴修理人 兼 現シューフィッター 兼 靴マニアの こまつです。

東京某所で靴修理やってました。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと毎日書いていきます。修理は9月で退職。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPはこちらhttps://sf-komatsu.com/

1084 ニセ革靴は難しい

 

おつかれさまです

こまつ@shoes_komatsuです。

 

今日もご相談がきています。

 

【概要】

中古で購入した革靴が本物かどうか

意見が欲しい

 

【詳細】

先日、メルカリでいわゆる

二都市チャーチのバーウッドを

35000円で購入しました。

 

素人目に見てもつくりは良いと

思うのですが、一点、

インソールのブランド刻印が

ぼやけているのが気になりました(写真1)。

 

また、ネットで拾った同じ靴と比較すると、

靴の踵部分の余白の広さが

若干異なることも気になり始めました

(写真2.3)。

 

(ご相談者様の実物)

 

(ネットの画像)

 

 

 

カバンなどのコピー品は

刻印がぼやけていると耳にしたことも

あるのですが、

革靴の場合はどうでしょうか。

 

判定は権利者しかできないと

聞きましたので、

主観でよいので意見がいただければ

幸いです。

 

 

ご相談は以上です。

 

まず結論ですが

本物だと思いますね。

 

私は鑑定士ではないので

正直こういう分野が得意では

ありませんが、

それを差し引いても、の答えです。

 

二都市チャーチ、ってことは

60~70年代ってことです。

 

・・・

 

まず中敷きのブランド刻印のぼやけが

気になる、ということですが・・

半世紀前の靴でしたら

なんらかの原因で箔押しがにじむことは

充分考えられます。

 

・新品のときからにじんでいた

・50年以上の保管で箔がにじんだ

・カビによる腐食

 

ざっと3つ考えられます。

 

箔押しって意外とシンプルな作業で

フィルムからの熱転写です。

その技術自体が70年代にようやく

工業製品に応用されはじめた黎明期なので

技術自体がつたない可能性が大。

 

なんせそのころなら

「チャーチ」っていうだけで通用したと

シンプルに推測します。

 

今のように箔押しのにじみだけで

ハネられる(不良品)可能性は

かなり低いはずです。

 

わかりやすく言えば

当時は「箔押し」っていうだけで

ひとつのグレードだったと思うんですよね。

 

今私の手元に80年代の靴の雑誌がありますが

BALLYとかジョンマーとかも

箔はにじみまくりですw

 

保管中の状態やカビについては

ケミカルと天然革ですから

ぶっちゃけ何が起きてもおかしくは

ありません。

 

個人的なカンだと

新品時からにじんでいた可能性が

一番高いと思います。

 

カバンのコピー品とは

パクる次元がちがいます。

これはあとで書きますね。

 

・・・

 

もうちょい歯切れよくいきましょう。

 

その中敷きがニセモノだったとします。

 

ニセモノ屋がそんな初歩的なミスを

犯すでしょうか?

 

二都市チャーチってことは

それなりに知識がないと

ニセモノもつくらないわけで、

どこでも作れるわけではありません。

 

そもそもニセの刻印をつくること自体が

めちゃくちゃカネがかかります。

ただのロゴだけではなく

細かい模様も入ってますでしょう?

 

技術的につくれるとしたら

ヨーロッパか浅草に絞られるんです。

 

私がニセモノ屋なら

もっとシンプルでかつ確実に

「売れる」ものをつくりますね・・。

 

二都市チャーチはいい意味で

マニアックすぎて

売れる相手が見当たりません・・。

 

いったん箔押しから離れて

写真をよっく見てますが、

中敷きを張り替えたあとが

みあたりません。

 

むりやり本体から中敷きを剥がすと

絶対にシワが入ります。

シワを伸ばすにはドライヤーをあてますが

そのアトも見当たりません。

 

加えて中敷きのはしっこに

V字の切り込みが見えますよね。

 

奥が「W」で

手前が「V」。

 

どっちかが「内側」マークで

どっちかが「サイズ」マーク。

 

こんな凝ったこと、

ニセモノなら絶対やりませんし

だとしたらホンモノからはがしますが

その痕跡がありません。

 

・・・

 

靴の踵部分の余白の広さが

若干異なることも気になり

 

余白、とは

ヒール部分の削りしろのことだと

思います。

 


ん────────・・・?

 

こんなもんじゃないでしょうか?

 

シングルソール(スペードも含みます)で

超高級靴なら

だいたいヒールまわりは攻めますよ。

 

高級靴だからマシーンにあてず、

なんなら最後は手ヤスリで削ります。

 

しかも天然革なので

半世紀の間に水分が抜けて

確実に縮小してるはずです。

 

ネットの茶色のバーウッドとは

たぶんですが

10年くらい古いんじゃないでしょうか。

 

それをさしひいても個体差と

ロット差もしくは

職人の差の範囲内です。

 

なんせ本体の出来が良すぎます。

 

・キャンバスライニング

・ミシンのピッチの細かさ

・ヒールの車飾りの細かさ

 

このへんは今のチャーチには

できない技だと思います。

 

・・・

 

カバンやほかの革製品とちがい、

めちゃくちゃマクロな視点ですが

革靴のニセモノほど

儲からない仕事はありません。

 

例外があるとしたらエアジョーダンとか

ニューバランスなんかのパクリですが

ちょっとそれとは話がちがいます。

 

靴のコピーだとカバンとちがい

 

各サイズ、木型、革、職人、工場、

靴の箱、保管する場所・・・・

とにかくすべてにおいてカネがかかります。

 

ニセモノ1足とホンモノ100足で

ようやくトントンじゃないでしょうか。

 

がんばって作ったとしても

(婦人靴なんかではたまにみかけます)

つくりがめちゃくちゃに悪い。

 

靴学校の生徒でもここまで雑に

つくらないでしょ・・・っていう

レベルです。

マジで誰でも一目でわかります。

 

K国でつくられているR社みたいな

開き直って大量生産!みたいな話だと

ちょっと話はちがってきますが

https://www.regal.co.jp/cms/pdf/2018-04-09-1.pdf

チャーチでこのレベルはありえません。

 

 

ということで、

こちらのチャーチは本物だと

個人的には判断します。

 

私からの回答はこんな感じです。

 

 

 

本題終了!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

【今日のおすすめの1足】

 

手製といえばこちらも

おすすめ。

 

「アイランドスリッパ」

 

ユニセックス

13380円。

 

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ほぼすべての過程が

手作業です。

 

サンダルは木型を使わずに

つくれますが、

アイランドスリッパの場合

木型(プラじゃなく本物の木)をつかって

手でつりこんでます。

 

これによって

「たかがサンダルの鼻緒」が

かなり立体的につりこまれて

足へのフィット感がヤバいことに

なります。。。

 

メイドインハワイですが

創業者は日本人。

 

ロゴの箔押し作業も

レーザーで照準を定めて

丁寧に押しています。

 

やるべき作業を全部やってるって感じですね。

いいんですよね~

アイランドスリッパ・・。

 

なつかしい感じもするし

高級感もあるし

コスパいいし。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

告知です~

 

春休みの時期もあってか

有料メール相談ふえてます。

やっぱお子さんの靴の相談が

多いですね。

 

ブログで追っついていないところまで

つっこんで書きますので

遠慮なしにどうぞ!

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お値段そのまま、

情報量1.5倍盛りでおとどけしますので

ひとこと添えていただけると。

(基本は秘密相談です。

公開を強要は絶対しませんので、ご安心ください)

 

靴のお買い物アテンドもやっています。

こちらもよろしくです。

シューフィッターこまつ

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

それではまた明日!