こんにちはー。
靴修理人 兼 シューフィッター 兼 靴マニアです。
きのうは日本の靴業界が
いよいよヤバいというかなりシリアスな
お話をしました。
ツイッターで勉強させて頂いてる浅草のメーカーさんも、
今月で「抜き型」屋さんが廃業されると
おっしゃっていました。
「抜き型屋さん」とは、
革って一足一足裁断するのって超めんどいじゃないですか。

で、鋼のこういうナイフ代わりの「型」をつかって

「クリッカー」という機械でプレスして
一撃で裁断するんです↓
はい、ひとつ間違えると指なんか一発でおちます。
指の2~3本ない裁断屋さんもたまにいらっしゃいます。
この、鋼でできてる「抜き型」をつくるのが
「抜き型屋」さん。
ここが一軒なくなるということは、
革の裁断がおっつかなくなる、ということです。
=靴が安定して作れなくなる、ということです。
マジで肝な存在なんです。
まあ、今はデニムなんかも裁断は
レーザーで焼ききってしまう時代ですが、
靴の世界だと、大手のスポーツメーカーでもない限り
レーザー裁断はまだまだ遠いです。
さて。
そろそろ本題にいきましょう。
そんな中でもたくましく生き抜いている国内のメーカーがあります。
この靴みてください。




めちゃめちゃキレイでしょう?
東京と千葉の工場で生産している
「ユニオン・インペリアル」という国内ブランドです。
うちの修理の現場にも高確率で現れますが、
まじでクオリティが高いです。
定価で5万前後。
ネットだと3万ちょいとか。
まず、アッパーの革質がやばい。
アノネイという世界最高峰の牛革のメーカー、
もしくはそれに引けをとらないクオリティの
革を使っています。
光るし、タフ。
何回でも、どっからでも直せる。
ローファーの写真のように、耐水性抜群のモデルまであります。
裏の革も国産か、アジア諸国の牛革をぜいたくに
つかっています。
なによりユニオン・インペリアルがすごいのは、
大丈夫?って声に出るくらいやわらかいんです。
だって9割手縫いだから。
作業風景はこんな感じ。

これが、

こうなって、

こうして、

こうじゃ。
伝わらんかのー。
デパート行って、リーガルと履き比べてみてください。
全っっっ然ちがいますから。
硬いのが好きな方はリーガルを買ってください。
このクオリティをアメリカとかヨーロッパで再現して
輸入すると、
余裕で10数万円超えてきます。
5万で利益出てんだろうか・・・(滝汗)
ちなみにここのメーカーは
正式名称が「世界長ユニオン株式會社」。
はい、アパレル大手の世界長がバックです。
世界長がスポンサーにつく前、
2回(1回という説もあり)は倒産してます。
それでも這い上がってこのレベル。
60代以上なら、「マレリー」とか「ミラショーン」で
ご存知の方も多いはずです。

リアルモカシン製法で、
見た目はダサいですがはき心地はヤバいです。
60~70年代にスイスのバリーがつくっていたものを
日本の医者や弁護士がこぞって愛用したところから
この手の靴がブレイクしたそうです。
ところで私は若いころイギリスで靴を学んだんですが、
グッドイヤーを熱心に授業していたC先生の足元は、

いつもマレリーのこれでした・・・。
あとこれのメッシュのやつ。
聞くと「日本人の卒業生が無事メーカーに就職して、
自社製品を送ってくれたんだ。」
「履き心地?ソックスだよ。トリッカーズなんか履けないよ!」
・・とマジ顔で言ってました。
いや、それマッケイだし、日本製だし、
それはいてグッドイヤー最高っていう授業すんなや・・
とは言えませんでした。
ノーサンプトンの靴の会合に顔出す時には
スポンサーであるチャーチの靴を履かねばならんらしく、
そのたびに
「かてえ靴だな、クソ。まじで履きたくねえわ」
と、でかい声で独り言をいってました。
C先生、生きてっかな。
あなたの教え子は(私だ)たくましく生きてますよ!
それではまた明日!