毎日靴ブログ@元・靴設計士 兼 元・靴修理人 兼 現シューフィッター 兼 靴マニアの こまつです。

東京某所で靴修理やってました。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと毎日書いていきます。修理は9月で退職。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPはこちらhttps://sf-komatsu.com/

1116 リクルートこそ痛い靴を履け

 

おつかれさまです

こまつ@shoes_komatsuです。

 

だいぶイタいタイトルですね。

自分でも引いています。

 

逆じゃねえ?と思った方も多いでしょう。

いえ、まちがいなく本心です。

 

どういうことかというとですね・・。

 

 

少し痛みがないと

身にならないからです。

 

革靴もパンプスも「痛いもの」という

先入観はあながちまちがっていません。

 

はじめから「痛くない」ジャストフィットの

靴を提案してください、と

お代を頂いてから提案することはできます。

 

しかし弓と一緒で

一度ひかないと矢って飛びませんよね。

弓を引かずに矢を放つと落ちますよね。

イメージとしてはそんな感じです。

 

具体的にお話しします。

 

回転ジャンプ!

 

・・・

 

・・からの着地!

 

今私は靴メーカー勤務の

企画担当者のサイトウになりました。

 

しばらくサイトウとして話を書きます。

 

私は日本と中国と少量をアジアで

生産している日本の中堅靴メーカーの

企画部にいます。

 

企画部と言ってもわりと何でも屋なところが

あるので、

メインの型紙作成は1日4時間ほど。

話しかけられるとダメになるので

たいてい夕方~深夜の作業になります。

 

朝は現場に出て生産されたものの

品質チェック。

完成品だけではなく

生産途中の工程もチェックします。

 

職人さんはクセがあって話しづらいので

まちがっている場所は紙に書いて

「指示書どおりにおなしゃす♡」と書いて

そそくさと立ち去ります。

 

午前中は検品と社内ミーティング。

 

昼はあまりキレイとは言えない

裁断室ですばやく弁当を食べ

歯を磨いて着替え、コーヒーなどを沸かして

商談相手を待ちます。

 

あ、今日はスーツ屋大手の

A社さんですね。

 

商談スタート。

 

A社担当の方から

少しホコリのかぶったサンプルを

受け取りながら、

まず聞かれるのが

「これ、500円でつくってください」。

 

いやいやいやいや。

ムリムリムリムリ。

 

A社担当の方は靴は完全に

専門外なので

(スーツ以外の靴・ベルト・バッグなんかは

すべて「雑貨」として扱われる。

百貨店に行っても靴は「紳士雑貨」「婦人雑貨」

コーナーに置かれるのはそういうこと)

靴に関しては悪意なく何も知りません。

 

サ「500円ではつくれません」

A「いつもこの値段ですが?」

 

サ「(原価計算書を出しながら)

 内訳です。

 3000円以下では生産不可能です。」

A「ま、それは御社の社長と話しますから」

サ「」

A「企画書です」

 

企画:○○年S/S コレクション

デザイン:写真の切り抜きが30枚くらい

コンセプト:

リクルートに新しそうな提案

・新しそうな素材

・いい感じの打ちだし

・芸能人の○○さんを起用するので

 そういうイメージで

 

サ「新しい素材というのは」

A「〇国のメーカーに任せているので

 まだ詳細はわかりませんが

 サンプルのソールはこれなので

 木型もこれにあわせてつくってください」

サ「素材の厚みと中底の厚みがないと

 型紙もつくれないし

 生産ラインも組めないのですが」

A「いつもそれでお願いしてますが?」

 

社長登場。

「サイトウ!まずその釘バットを降ろせ!」

 

ここで大事なことは・・

A社の担当者は

マジでなんの悪意もないということです。

 

結局カネの話は

工場の社長が決めるので

500円でつくらされて

 

納期もゼロから1日3000足つくって

ショップに届くまでどうかんがえても

半年はかかるでしょ、ってところを

3か月の突貫になります。

 

こういう案件が同時進行で

年中やすみなしで5件以上。

 

商談(?)が終わって

A社の担当者と社長は外へ。

 

残されたサイトウはコーヒーと

灰皿を片付け、

バットの釘を打ち直してから収納。

 

ふう。

A社の前回のサンプルをバラし

中底と使われるあらゆる素材の厚みを

想像力でまかなって

設計図をつくり・・・

 

・・・そのまえにデザインか。

30枚の写真をシャッフルし

羽根とキャップをきめて

10枚くらいをラフに描いて

メールで先方に提出。

 

1週間後

A「全部描き直してください」

サ「具体的には」

A「もっといい感じで」

 

2日後

サ「Aさんの意見を取り入れたら!

 こんなにいい靴が描けました!」

A「いいですね・・これでいきましょう!」

 

うん。

サイトウは実はほぼまったく

描き直してません。

数足をプレーンからスワールに直しただけ。

これで確実に案が通って

その日もなんとか0時前に帰れるはずです。

 

このノリで生産までいってしまいます。

 

ショップに並んでいる製品は

なぜか最初の打ち合わせの要素が

2%くらいしか入っていませんが。

 

A「まあまあ売れましたね。

 釘出の検査もありがとうございました。

 今後絶対ないように注意してください。

 ではA/Wの件ですが」

 

サイトウ君おつかれさま。

回転ジャンプ!

 

・・・

 

・・からの着地!

 

はっ

なぜ私は釘バットなんかを手に・・。

 

ゴソゴソ(押入れにしまう音)。

 

という感じで

完全に私の脳内だけの

過去の架空の妄想話でしたが

なにか感じて頂ければ幸いです。

 

要はですね。

アンダー2万とかの革靴は

痛いに決まってるんです。

 

さっきの原価500円の靴なんか

カタカタカタ(何かを叩く音)・・・

タンッ!

17000円に化けとる。

 

もちろん例外はあります。

 

しかしここでいきなり正解を書くより

安い靴のダメさ加減を

半年とか1年くらいは味わってほしい。

 

するとあるとき3万の靴を

手に取って、履いたときに

ちがいがなんとなくわかります。

 

・どこがちがうのか

・なぜちがうのか

・靴ってこんなんだっけ

 

みたいな好奇心が100%わきます。

もしかすると

 

・こんな痛い靴はおかしい

・こんな会社おかしい

・こんな人生詰んでる

 

とまで思うかもしれません。

 

オーバーではなく

痛いパンプスひとつで大きな人生の

決断ができた人もいます。

 

昭和的考えかもですが

痛くないと人って考えないもんです。

マイナスがあってはじめて

プラスの良さがわかるんです。

 

国内の靴メーカーはかわりませんよ。

いくらテクノロジーが進化しても

とりあえずメーカーにカネがありません。

 

膨大な利益がA社には発生していますが

おもに

・服部門の赤字の埋め合わせ

・芸能人への巨額のギャラ

・オリンピックなどへの広報活動

にキレイに使われているので

靴は進化しませんし

人も育ちません。

 

痛い靴の存在って

砂漠の中の水たまりの水に

似ています。

 

限界の状態だとだれでも

どんなにきたない水だって

飲むでしょう?

 

そのときに

周りが本当に砂漠なのか

気付けるかどうかじゃないでしょうか。

 

砂漠と思っていたのが実はサウナで

出てきた瞬間おいしい空気と

おいしい水やビールがあります。

 

なんで靴をみがいたり

リペアする人がいるんだろうとか

本当にこの靴の必要があるのかとか

そのときはじめてゼロ地点で

考えられるんです。

 

その人にとっての

 

・砂漠とは(砂漠じゃないかもしれない)

・砂漠から出たときの景色とは

・飲む水の味とは

 

って全部答えがちがうので

ひとまとまりには

答えられません。

 

「なんかこの靴いやだ」

 

この感覚って

めちゃくちゃ大事です!

これがないと

 

「なんかこの靴いいかも」

「なんかいいらしいから

とりあえず○○でも買ってみよう」

 

この感覚にすら到達できないはずです。

健闘を祈ります。

 

本題終了!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

【今日のおすすめの1足】

 

ムーンスター

「ジェントリーGE101」。

 

8580円。

GE101ブラック/ブラック

GE101ブラック/ブラック

GE101ブラック/ブラック

GE101ブラック/ブラック

GE101ブラック/ブラック

GE101ブラック/ブラック

ムーンスター(moonstar) gently カジュアル シューズ GE101 

 

本題と真逆をいく

絶対スニーカーってバレない

ストレートチップ

 

定価は11000円ですが

まあまあ品薄になるくらいには

売れてます。

 

4Eなのでややゆるめ。

私がスニーカーで28ですが

ジェントリーは27.5でジャストでした。

 

砂漠の外のビールって

これですよ。

 

ふかふかだし雨弾くし

見た目はリーガ〇以上なのに

履き心地はどう考えてもVANS。

 

ムーンスターは若い時

サイトウ・・じゃなかった私が

久留米の工場にお邪魔していますが

そのときから優良会社でした。

 

商談のときにも無茶なことは言われず

本当にいい空気の会社でした。

靴を見れば社風がわかりますが

今でもそうだと肌で感じます。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

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(基本は秘密相談です。

公開を強要は絶対しませんので、ご安心ください)

 

 

靴のお買い物アテンドもやっています。

こちらもよろしくです。

シューフィッターこまつ

 

どちらも50歳の壁はとっくに

とり払ってます。

HPはいずれ変えます。

老若男女、誰でもどうぞ!

 

それではまた明日~