毎日靴ブログ@元・靴設計士 兼 元・靴修理人 兼 現シューフィッター 兼 靴マニアの こまつです。

東京某所で靴修理やってました。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと毎日書いていきます。修理は9月で退職。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPはこちらhttps://sf-komatsu.com/

1065 メイド・イン・プリズン

Amazon.co.jp: 函館少年刑務所 マル獄シリーズ 刑務所の前掛け ヴィンテージ風 フルロゴ: おもちゃ

 

おつかれさまです

こまつ@shoes_komatsuです。

 

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キャピック。

 

全国各地で定期的にイベントをしている

どこかで見たことが誰でもあるはずです。

CAPIC ~キャピック 心をこめた 手づくりの逸品~

 

刑務所内でつくられた各製品を

相場のかなりの格安で販売する

ある種の名物イベントと言っていいでしょう。

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横須賀名物、ブルースティック!

なつかしいですね~。

 

自分の靴を小学生の時初めて洗ったとき

「これを使いなさい」と

親に渡されましたわ・・。

いまだに愛用者おおいでしょ。

 

名物・・・という言い方が

正しいかどうかは微妙ですが

ブルースティックにかぎらず

値段の割にモノがいいのは確かです。

 

相場より半額~3分の1くらいでしょうか。

 

ホームページから一部抜粋しますが

 

刑務所で製作した製品は、従来から

刑務所作業製品と呼ばれていますが、

より広く親しめるブランドイメージに

変えるとともに、

「安くて品質の良い」商品を広く

ご愛用いただくようにするため、

矯正協会刑務作業協力事業の英訳

(Correctional Association 

Prison Industry Cooperation)の

頭文字をとったものです。

 

そして、「CAPIC」と、

この文字を組み合わせたマークを作り、

これを商標としております。


なお、売上げの一部を

犯罪被害者支援団体の活動に助成しています。

 

単純に刑務作業だけではなく

被害者の支援団体を支援しています。

 

このブログは道徳の場所ではありませんし

犯罪は犯罪でしょう。

しかし私の考えではモノに非はありません。

 

小さいものではありますが

私が長年使っているキーケースも

相当昔・・たぶん20年くらい前に

800円くらいで買ったものですが

全然現役です。

 

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うん・・・

まあ・・・

そろそろ買い替え時ですね。

 

ただそのときはなんとなく

手ごろなキーケースをさがしていたのと

革の靴ベラつき、というのが

気に入った記憶があります。

靴ベラは結局あんまり使いませんでしたが。

 

キーケース (広島) A型

製品コード
401077403
生産施設
広島
規格(幅・奥行・高さ)
180*100*4
材質
牛革
小売価格
1,300円

上質な牛革を使用しています。4連のフック付です。色も数種類あります。

 

これが現行品。

今の方がモノがいいかもしれません。

で。

あんまり知られてませんが

 

〇靴もつくっています。

 

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実物です。

 

山羊革ですが、このメッシュ

全部手編みです。

 

刑務所内での作業はいろいろありますし

さまざまな製品がつくられています。

おそらく今でも変わっていないでしょうが

靴の場合は長期受刑者がつくっています。

 

20代のころ靴の設計に携わっており

某刑務所との取引もありました。

 

靴をまるごと発注するわけではなく、

分業ですので「製甲」という

アッパーをつくる工程を

製甲屋さんに頼むわけです。

 

今はわかりませんよ。

 

ただ、20数年前は

刑務所への発注は超激戦でした。

 

各メーカーがこぞって刑務所に

アッパーの製甲を依頼してたんです。

なぜか。

 

・絶対に納期を守る

・とにかく品質がいい

・コストが破格的に安い

 

からです。

発注しない理由がありません。

 

もちろん細かい仕様を伝えることは

できないので、

上の写真のような

「シンプルなデザインだけど超手間がかかる」

ものがメインでした。

 

当時、アッパーの発注だけでも

倍率がつねに5~6倍だったと思います。

どうやって入札が決まるのかは

私は今も知りません。

 

ただし実際に発注が決まり

商談・・というか打ち合わせまでは

行ったことがあります。

 

 

〇商談相手は刑務官

 

刑務所までは自社の車で行きます。

門が開いて────

記憶では扉が2個。

 

清潔な商談室で

淡々と仕様書とサンプルを

刑務官に渡して説明します。

 

あたりまえですが普通の人達です。

屈強なマッチョではなく

市役所にいそうな方たちで

商談というか金額は決まっているので

説明は30分もかかりませんでした。

 

先方も手慣れているので

質問らしい質問もなく

よくも悪くも規則なのか

お茶とかも出ませんでした。

 

納期もきっちりなので

たぶん余裕をもって出来上がってるのでしょうが

きちんと日付・時間通りにとりにいくのが

唯一「らしい」点だった記憶があります。

 

刑務官と雑談など全くなかったので

あとから本で読んで知ったのですが、

アッパーをつくる「製甲」レベルは

中級レベルの服役者。

 

さらに服役年数の長い受刑者だと

マッケイ製法の底付け~仕上げまで

やっていたみたいです。

 

じっさいかなり昔に靴を拝見しましたが

(刑務所の前で青空市をやってた)

デザインこそ定番だったものの

靴そのもののレベルはおそろしく高かったです。

 

革底にマッケイ製法ならではの

きめ細かい「飾りゴテ」がほどこされ、

アッパーもメッシュで1万円前後。

 

当時の同僚となかば本気で

メイドインジャパン」じゃなく

「メイドインプリズン」の方が

売れるんじゃない・・・?と話しました。

 

すべては過去の話です。

2011年あたりを境に

受刑者の少子高齢化も進み、

靴をまるごと作れる人も

ほぼいなくなりました。

 

今はもう千葉刑務所でしかつくっていません。

革の裁断から底付までやっています。

矯正展(文化祭のようなもの)では

オーダーメイドも受け付けており(!)

今でも高い人気があります。

 

例年11月くらいに開催されているようですので

気になる方はご確認ください!

http://keimusho.net/

 

 

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しかし────現在はほぼすべてゴム底で

本体と靴底を縫わない

「セメント製法」です。

 

しかしアッパーの超絶な技術は健在。

 

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こちらの靴が9900円で、

 

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こちらは百貨店で売られているイタリア製。

10万弱。

 

ゼロがひとつ違うってレベルじゃありません。

全体像だと差は出ますが

こだわらない方だと

ちがいがわからないかも。。。

 

 

〇靴は人気がない

 

これもあとから知ったことですが、

20数年前も今でも

受刑者にとっては

靴づくりは人気がないそうです。

 

理由もシンプルで

出所してから役にたたないし、

出所する頃の年齢を考えると・・

ということです。

 

なので超絶技法のマッケイ靴を

つくっていた方というのは

要は「出れない」方たちだったんですね。

 

なるほど・・・。

 

タンスとかの木工の方が

まだ勤め先がありそうですもんね。

 

考えてみれば靴づくりって

めちゃくちゃ刃物を使います。

使わない工程がないっていうくらい

刃物だらけです。

 

だとしたら刑務所内での作業も

かなりの監視下に置かれるでしょうし

キャピックの靴のクオリティが

ちょっと下がり気味かな?と感じるのも

そのあたりでしょう。

 

ただ!

それを差し引いても値段のわりに

特に紳士靴はレベルがめちゃくちゃ高いです。

 

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デザインの好みは別としても

このリアルメッシュ感は

国内・・というか海外製でも

まず見かけないレベルです。

 

今後は刑務所内での

「靴づくり」そのものの存在も

まちがいなく消えていくので

気に入ったものをみかけたら

買っといた方がいいです。

 

特に袋モカシンの出来栄えは

白眉ですよ!

 

 

本題終了。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここでCMはいります。

 

~お靴でお困りのかたは

こちらからお気軽にどうぞ!~

シューフィッターこまつ – 全国どこでもシューフィッターサービス

 

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【今日のおすすめの1足】

 

リアルモカシンつながりで・・・

 

ティンバーランド

「3アイレット」。

 

23100円。

【エントリーで最大ポイント15倍】 ティンバーランド 3アイレット Timberland 50009 AUTHENTICS 3EYE CLASSIC LUG ブーツ メンズ 本革 カジュアルシューズ カジュアルブーツ モカシン 靴 シューズ ワークブーツ ローカット レザー 送料無料 【あす楽対応】

 

これは今後20年はなくならない靴でしょう。

リアルモカシンで

オイルレザー。

 

持ってみるとブーツみたいに重いのに

履くと靴下みたいにフィットするので

足元を2度見るくらい軽く感じます。

 

邪道ですがティンバーの3アイレットは

靴ベラなしでガシガシ履いちゃいましょう。

脱げません。

 

ヒールカーブは絶壁のように直線なのに

極厚のアンクルパッドと

モカシンの屈曲性で

ほんっっっとに吸いつきます。

 

この靴が壊れたところを

あんまり見たことがありません。

ヒールも一体式ですがきちんと直せるし

アッパーはタフのひとこと。

 

過去いろんなメーカーがパクりましたが

本家だけがやっぱり残りましたね・・。

これからのシーズン、

次の冬まで使えますよー!

 

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それではまた明日!