元・靴設計士 兼 現・靴修理人 兼 シューフィッター 兼 靴マニアのコマツです。

東京某所で靴修理やってます。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間ほど靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと書いていきます。

38 C.W.ニコルとホーキンス

C.W.ニコルさん。ウェールズ出身。今年(2020年)4月に79歳で旅立たれました。

ご高齢のせいかここ10年ほどはメディアへの露出も少なくなっていましたが、90年代はアウトドアブームもあって、こんなCMに出演していらっしゃいました。

まだABCマートが今ほど勢力を張る前夜です。川をじゃぶじゃぶ渡るバージョンなんかもあったんですが、今は映像は失われています。学生だった私はゴアテックスも知らなかったので、「ブーツで川渡れんの!?」と度肝を抜かれた記憶があります。

個人的にこの人が大好きでした。みなさんに質問ですが、この人は何をしている人でしょうか?何をしてきた人でしょうか?ご存知ですか?

本業はガチンコの作家です。

で、めちゃめちゃ面白いです。キャラでいうと朝倉未来が近いかもしれません。さいころからとことんワル。教師を殴るのは当たり前、自分の正義を貫くためなら叔父も刺す(笑)。wiki読んでください。翻って好奇心を示すと北極探検隊にも名乗りを挙げ、北極でもくだらんいたずらをしまくる。ユーチューバーだったら確実にヒカキン超えてます。具体的に何をしたかは、「北極探険十二回 」(竹内和世訳 潮出版社 1984年 のち新潮文庫)、うまくいけばブックオフで100円のコーナーにありますが、めちゃくちゃ面白いです。

ケンカしてるうちに、柔道、次に空手(伝統派・松濤館)に出会って、若いうちから来日するわけです。松濤館で黒帯を取ったあと、エチオピアで国立公園の管理者になり、密猟者と戦うわけです。その時履いていたブーツがイギリス製のホーキンス。

あるエッセイの中にブーツの由来が出てきますが、ロンドンで買う時めちゃくちゃ値段が高かったこと、「今日本で見かけるホーキンスとは全く違う」グッドイヤー式で超重かったこと、馴染むまで時間がかかったが、馴染むと丸1年手放せなかったこと、何度も沼や水に浸かったが焚火で乾かしたこと、任期が終わる時、一番信用のおける現地の助手にブーツを託したこと・・C.W.ニコルの青春記 1 – 2 (竹内和世訳 集英社 1984年 – 1985年 のち文庫)

もうね、本読んでほしい。めちゃくちゃな人なので、いい意味で。

長野県の黒姫に永住を決めたのもアウトドア好き(本人はアウトドアという概念もなかったみたいですが)と、自分専用の空手の道場を持つためでした。

奇しくもその頃本も売れ出し、数年後にABCマートから声がかかったわけです。でも本人はその時ABCマートがもちかけたホーキンスのブーツが「まがいもん」ってことを知っていたはずなんです。

パテントをABCマートに奪われたホーキンスは、安価ではあるけど粗悪。グッドイヤーではなく、あたかもグッドイヤーにみせかけたサイドマッケイ。革底ではなくポリウレタン底。ナイキじゃあるまいしわざと目に付くベロやアッパーに施されたわざとらしい「G.T.Hawkins」のロゴ(G.T.は創業者のジョージ・トーマスからの由来です)・・。

これは個人的な推測ですが、いたずらっ子のニコルさんからしてみれば、日本のやわなアウトドア連中にはうってつけの意趣返しだったんではないでしょうか。実際今ではABCマートに行くと、ホーキンスというホーキンスは「どっかでみた何かのパクリ」アメリカで言うところのスケッチャーズ(ブログ㉛)でしかありませんから。にしても、ニコルさんが生きていたら暴れてショップのひとつくらいはつぶれていたかもしれません。

えー・・・毎度ですがまとまりがない終わりです。私ならホーキンスは生涯買いません。作りが悪い、素材が悪い、修理できない・・・カネの無駄です。

ただし、悔しいけどひとつだけホーキンスが産んだ名作があるんです。次回はそれを紹介したいと思います。

では、今回はこのへんで!