毎日靴ブログ@元・靴設計士 兼 元・靴修理人 兼 現シューフィッター 兼 靴マニアの こまつです。

東京某所で靴修理やってました。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと毎日書いていきます。修理は9月で退職。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPはこちらhttps://sf-komatsu.com/

1209 その底は安くてもダメだ・・・。

足を引っ張る人のイラスト(棒人間)

 

おつかれさまです

こまつ@shoes_komatsuです。

 

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8月5日・12日のこちら

1199 告知ふたつ

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「子供の靴と足」の無料相談会、

どちらも午後~夕方がまだ半分くらい

あいてます。特に意外と12日。

 

ご予約優先ではありますが

※ご予約窓口はこちら→お問い合わせ

飛び込みでもいけるかもしれませんので

お気軽にどうぞ~!

 

告知終了~!

 

・・・

 

本題です。

 

YouTubeのショートでもあげたんですが

【せこいw】安すぎる靴の悲しい現実。

爆笑しながら解説してるのは

気にしないでください。

 

これ60秒では見てる方は

全然わからなかったと思うんですよね。

 

考えてみると

地味に大事な話なんで

しっかりここで書いていきます。

 

靴って軽い方がいいし

じっさい売れるじゃないですか。

 

「どれだけ軽くするか」ってことに

どこのメーカーも

すさまじい情熱と予算をかけるわけですよ。

 

だからニューモデルが出るたびに

「前作より〇グラム軽量化に成功!」って

キャッチコピーに入るじゃないですか。

 

靴の設計10年弱やってたんで

その大変さはわかります。

だって軽くするところ、

ほとんどないんですもん。

 

アッパー(上の部分)はそもそも

革を軽くすることはできないし

メッシュや合皮ならそもそも軽い。

 

なので軽くするとしたら

だいたいソール(底)に

加工することになります。

 

・・・

 

ソール(底)はみっつにわかれます。

 

・インソール

・ミッドソール

そして

・アウトソール。

 

①インソール

 

インソールはまあまあ軽くできます。

ここでいうインソールは

「パカッ」っとはずれるカップインソールではなく

その下の靴と直接つながってるパーツ。

 

「靴の背骨」と呼ばれるほど

大事なパーツですが

革が一番重い。あと高い。

 

ですが吸湿性と耐久性がハンパじゃないので

高級靴でここを「革以外」にするところは

ありません。

 

しかし高級靴でもパンプス・サンダル

あるいは紳士でも安めの革靴・

原始的なスニーカーにはパルプが使われます。

これは軽い。

 

ただし軽いだけでは弱くて体重を支え切れないので

(悪質な設計はパルプだけで終わらせます・・)

バッカ―と呼ばれる硬化パルプで

みえないところでも靴を丈夫にします。

 

軽さを売りにするスニーカーや

ハイテク革靴あたりでは

樹脂製が多いですね。

 

圧倒的に軽いんですが、

まとまった量を生産しないと

割に合いません。

 

しかしこれからの時代、たぶん

限りなく100%の靴のインソールは

樹脂製になるでしょう。

それだけ軽くて丈夫で水にも強い。

 

「洗える革靴」「洗えるローファー」なんかが

出てきたのは

ひとえにこの樹脂インソールのおかげ。

パルプだと水にさらすと上下に剥離します。

それにカビるし腐食にも弱いですからね。

樹脂は大量生産靴には最強の材料です。

 

②ミッドソール

 

革靴やパンプスだと

ミッドソールがない場合も多々ありますし

それでなにも困りません。

 

ミッドソールはスニーカーの

命ですね。

ここです。

ムーンスター公式より)

この白くてぶ厚いところ、

これがミッドソールです。

簡単にいえばスポンジですね。

 

目的はただひとつ、

衝撃を吸収すること。

 

なので各社がしのぎを削って

 

・どれだけ軽くて

・どれだけへたらず

・どれだけクッションが効くか

 

ということを

本当にマジで徹底して

なんなら産業スパイでも使いかねない勢いで

めちゃくちゃ研究しています。

 

もうカネと秘密情報の塊。

アディダスとプーマで

ガチ裁判なんてのもかつてありましたね。

 

しかしどのメーカーにも

共通して言えることは

いかんせん軽くてやわらかい。

スポンジですからあたりまえだ。

 

直接地面に接すると

スポンジなんで

あっというまに削れます。

ここ大事なんで

ちょっとおぼえといてください。

 

なのでアウトソールがあるんです。

 

③アウトソール

 

これがいわゆる「靴底」にあたる

部分ですね。

減りづらさが勝負。

 

減りづらい、ってことは

材料がみっしり詰まってないとダメなので

どう頑張っても重いです。

材料そのものは。

 

だから時代とともに

革靴だと

革からゴムへ。

 

今でもよくある

全部「合成ゴム」のアウトソール。

かなり重いです。

靴全体の8割はこの「アウトソール」の重さ。

 

しかし重い靴は嫌われるので

こんな感じで軽くします。

・・・よくわかりませんねw

微妙にグレーのところがあるじゃないですか。

カカトと、つま先と。靴の中心の3か所。

ここがうすいんですが重くて

グリップするアウトソールです。

 

歩行の研究も相当進んでるので

ぶっちゃけこの配置はほぼ正解です。

ここだけ守ればいい。

上の写真のよりすべりません。

 

スニーカーがもっとわかりやすいですね。

昔のがこう。

潔いほどに全面!

 

技術的にこうするしかなかったし

「全面の方がすべりづらいでしょ」

っていうのが

あたりまえの感覚だったんですよね。

 

ちなみにナイキの70年代のです。

片足400グラムちょい。

 

それが今ではこう。

同じナイキですが

片足210グラム。

 

厚底+軽量で有名なHOKA。

片足250グラム。

 

ナイキもHOKAも

色のついてるところだけが

アウトソールです。

 

ナイキは厳密にいえば

かかとの両サイドも白いところも

薄くて重いアウトソールなんですが。

 

それでもこの面積の量ですよ。

約半分ですよね。

でもこれでいいんです。

削れるところはもうわかってるので。

 

余分なところをそぎ落としたら

こうなりました。

これでも全然滑りませんし

HOKAに至っては数年間もちます。

 

このアウトソールにも

各メーカーはカネと時間をかけます。

ミッドソールと同じ理由。

 

・・・

 

さて問題はここからだ。

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