シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ

東京某所で靴修理やってました。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと毎日書いていきます。修理は9月で退職。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPはこちらhttps://sf-komatsu.com/

2029 革靴の値段感覚、スニーカーでバグってない?──10万円以下の本格靴は奇跡です。

 

おつかれさまです

シューフィッター佐藤靖青です。

 

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炎上覚悟の内容ですが本格革靴が安すぎる。

15万・20万でもよーく考えると

まだ安くない?と最近考え直してます。

 

ちょっと前は10万超えたら

「既成靴で10万?!怒」と驚いてましたが。

エドワードグリーン、30万。

スキンステッチという基地外な縫い方で

エプロンを仕上げてます。

クロケ、15万。

マシーンも使いますがほぼ手作業。

パーツのひとつひとつが

厳選された超一級品。の、塊。

トリッカーズ、11万。

マシーンは多用してますが細部は手作業。

イギリス王室御用達。

 

どれも私は20数年前の価格を知ってるんで

ええええええええええええええ

っと驚くんですが、最近考えを改めました。

 

これは適正価格だと思う。

いや、これでも安すぎ。

 

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革靴で既成靴とはいえ、

現場にいた感覚で言えば

ほとんど手製靴と遜色ない手間です。

 

つくるだけではなく

革をさがす・なめす」

「目を見ながら裁断する」

「マシーンを手で操る」

 

特に鬼門は革ですね。

いい革(デュプイとかアノネイ)って

エルメスに出資・買収されてるんで

なかなかいい革がまわってきません。

 

極論エルメスの革靴と同じ価格でも

全然おかしくないんです。

エルメスはもうメインがレザースニーカーに

なってますけどね。

 

これ考えると、本格革靴は1足30万でも

まあまあ妥当な額なんです。

現場であのめんどくささを知ると

たぶんだれでも納得するのでは。

 

もちろん円安もあれば原価高騰もありますが

昔の方がむしろ安すぎたんですよね。

グッドイヤーウェルテッドに限って言えば

あれほど究極にめんどくさい製法はないので。

 

・・

日本の靴が安すぎるんですよ。

シェットランド、7万。

山長、10万。

 

正直日本でつくっていて、

あの革のクオリティで

全工程ほぼほぼ手作業でこの価格、

よく考えると安すぎます。

 

靴工場に勤務していて

高給取り、ってあんまり聞かないでしょう?

私の知る限りだとサラリーマンより給料的には

たぶんかなり下です。

 

加えて現場の環境も、ハードですよ。

革の裁断も油断すれば指が飛びますし

ミシンに至っては布とちがってやり直し不可なんで

一針のミスでアウトです。

 

革靴つくるときは有機溶剤まみれですし

あらゆる工程で熱つかうんで

今の時期なんかは灼熱地獄です。

 

体力と集中力切れたら終わり・・

ではなく、ラインがあるので

体力が切れても終われません。

 

クソ重いプラ型を運ぶ~革を選ぶ~

裁断~縫製(製甲)~つりこみ~仕上げ

細かくカウントすると100以上の工程で

どこでもミスが許されない。

 

売れなきゃ元も子もないのは承知でも

こんな価格ではメーカーもショップも

本来は全然うれしくないはずなんです。

 

・・

スニーカーの価格でバグっちゃってるんですよね、

靴の価格の感覚が。

海外の手を借りたとて運ぶ人が必要だし

製法問わず5万以下ってムリです。

 

一番安いパターンで

「合皮+ゴム底の接着」だとしましょう。

これでようやくスニーカーと同じ土俵です。

 

そこで1万とかの価格だと

もう「高い」と思うじゃないですか。

インドとかバングラの工場直送ならともかく

日本で売る以上ショバ代もショップの人件費も

かかるわけで。

 

GUとかABCマートの革靴は

服もしくはスニーカーの売り上げの上に

のっかってるからあの価格で

ギリいけるんです。

 

まわりくどい書き方ですが

だからスコッチグレインとか

マジでありえない価格なんですよ。

4万・・・。

メーカーの方針とマーケティングも

もちろん絡んできますが

はっきり言って時代錯誤レベルに安過ぎ。

 

リーガルも同じ。

4万。

いや、あらためて考え直すと

今の日本ではありえない価格です。

 

・・

高い高い言ってても話は終わらないので

グッドを買ったらせめて2~3回は

オールソールしましょう。

 

オールソールしてこその

ようやくのグッドイヤー製法が報われるんです。

一度もやらないってありえないんです。

 

エアコンのリモコンが壊れたとします。

でもドンキに行けば

たいていのリモコン、2千円とかで売ってるでしょ。

 

リモコンが壊れたからといって

本体ごと替える人、まずいないでしょ?

おなじ話なんです。

 

とはいえグッドのオールソールも

2万前後はします。

やったことある身ですが、この価格は

妥当どころかまだ全然安い。

 

本体が4万とかってそれくらいおかしい価格なんです。

革の優劣、細部の優劣を鑑みても

やっぱ本格革靴って普通に10~20万しないと

おかしいんですよね。

 

自販機の水もお茶も

160円とか普通じゃないですか。

 

なのに革靴だけが20年くらい変わらない価格は

やっぱちょっとおかしい。

もはや嗜好品なんだから

せめて「底縫い」の工程があればもう

最低価格10万でも良いと思います。

 

 

本題終了。

 

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【今日のおすすめの1足】

リーガル「2236NA」

32560円(定価・40700円)。

【正規品】 REGAL リーガル 2236NA ブラック プレーントゥ

これも定価4万は絶対おかしい。

昭和から続く名作ですが

たぶんほとんど価格変わってないのでは?

 

海外製品に全然負けないタフなつくり、

キズ・シミどんとこいの肉厚牛革、

裏も牛革+キャンバス。

 

たぶんですがノーサンプトンの工場で

職人さん・経営者にこれ見せたら

8万以下の答えは返ってこないでしょう。

つくりはチャーチと遜色ないんで。

 

これがリーガルショップで普通に買えること自体が

ある意味すごいんすよ。

いいか悪いかは難しいとこですが

日本のすごいところなんですよね・・。

 

 

※過去ご紹介した靴はこちらにまとめてあります。

楽天ROOM

 

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