毎日靴ブログ@元・靴設計士 兼 元・靴修理人 兼 現シューフィッター 兼 靴マニアの こまつです。

東京某所で靴修理やってました。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと毎日書いていきます。修理は9月で退職。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPはこちらhttps://sf-komatsu.com/

1727 セメント製法の逆襲!接着靴が最強である理由とは?

 

おつかれさまです

こまつ@shoes_komatsuです。

 

ひさしぶりに

激マニアックな話をしましょう。

靴の製法についてです。

 

「この靴の製法は~」とかよく聞きません?

そもそもそこから説明不足なんですが

「底付け」の方法のことです。

 

足を覆ってる部分が、アッパー。

その下に底。

このふたつをどうくっつけるかだけの話です。

 

さきに言ってしまいましょう。

個人的に最高の製法は

「セメント製法」です。

 

セメント製法とは、

糸を使わず、アッパーと底を

接着剤でくっつけた「だけ」の方法ですが、

ぶっちゃけこれが最強ですって。

 

https://shoemaking-pj.com/wp-content/uploads/2018/11/%E3%82%BB%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E8%A3%BD%E6%B3%95.jpg

出典:https://shoemaking-pj.com/wp-content/uploads/2018/11/%E3%82%BB%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E8%A3%BD%E6%B3%95.jpg


ともすればこの製法は

必要以上に虐げられてます。

 

・簡易的

・シンプルな

・容易・安価

 

とかの、悪意にも似た

ムダな称号をつけられますが、

それの何が悪い?

 

しっかりと縫い上げた職人技が光る高級靴にも

ゴミのようなレベルはあります。

 

出し縫いとすくい縫いが逆転していて

オールソールができない

14万円のスイスの靴とか絶対買うな!

 

16500円の

まず底剥がれをみたことがない

リーガル「ケンフォード」シリーズの方が

100万倍えらい。

 

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リーガルは「グッドイヤー製法」が

やたら有名ですが、セメントに特化したシリーズが

「ケンフォード」です。

 

ややロングノーズデザインが気になりますが、

上品なデザインも増えてますし

足入れがしっくりきたら全然「買い」です。


・・・

 

対する最大限の賛辞が贈られる製法では

メジャーなところだと

 

・グッドイヤー製法

・ノルウィージャン製法

・ハンドソーンウェルテッド製法

・マッケイ製法

・ステッチダウン製法

 

などなどが目につきますが、

ぶっちゃけで言いますが

メリット・デメリットを差し引きすると

どれも変わりませんて!

 

「手縫い靴」に代表される

ハンドソーンウェルテッド製法

なんかは、たしかに美しい。

 

しかしお値段は5万以下ということは

まずないでしょう。

あったとしても職人さんが食っていけません。

 

ハンドソーンなら15万でとんとん、

いい仕事をするなら30万はほしいところです。

 

嗜好品を極めた方しか履けません。

それでよし。

ハンドソーンは皮肉抜きで芸術品。

住みわけがいい意味で違います。

セメント製法を比べるな!って話です。

 

セメント靴の何が悪い?

接着剤でくっつけた「だけ」の製法ですが

底剥がれした経験がどれだけあります?

 

ほとんどないでしょう。

 

はがれた経験があるとしたら

半分くらいは接着剤のせいよりは

ゴム底(ウレタン底)の加水分解が原因です。

 

そもそもセメント製法を卑下するなら

スニーカーもパンプスも

サンダルも一切履くな!って話です。

 

接着剤の進化って、すっっっっっっ

っっっっっっっっっっっっっっっっっっ

っっっっっっさまじいんですよ!

 

ご婦人ならパンプスの底が完全に

べろっと剥がれた経験なんか

まずないでしょう?

パンプスはほぼ100%セメント製法です。

 

製法マニアが語らない

不都合な真実を語りましょう。

セメント製法以外の製法も

すべてセメント製法との合わせ技です。

 

単独では成立しません。

 

グッドとかマッケイとか、

わかりやすく糸で縫いますよね?

 

しかし接着の9割くらいは

接着剤が担当しています。

糸はその補助と思ってくれてOK。

 

ステッチダウンも、オパンケも、

ノルウィージャンもそう。

接着剤を使わない靴などないんですよ。

 

・・・

 

セメント製法のデマもすさまじいですね・・。

簡単にウソの記述を

さらし上げておきますね。

 

デマ①蒸れる

 

→蒸れるのはほかの製法も同じ。

中底に革が使われているか

パルプが使われているかの差。

 

セメントはコストを安くするため

100%パルプの中底で通気性は悪いですが

それはグッドもマッケイも同じこと。

 

パルプの中底でできているグッドもマッケイも

全然あります。

 

セメントは接着剤がサランラップみたいな

役目をはたして蒸れるってのも

ウソもたいがいにせえよ、って話。

 

工場で大量生産される靴は、製法も値段も

関係なく、がっつり接着剤使います。

剥がれたらアウトなんで。

 

 

デマ②修理できない

 

→余裕でできます。

やらない人が多いだけ。

 

セメント製法は、正直

修理はめちゃくちゃやりやすいです。

 

ただし全とりかえの「オールソール」という

大修理だと、どうしても

両足で8000円くらいはかかる。

 

だったら新品買った方が・・ってだけの話で、

思い入れのある靴や

パンプスのオールソールなんかは

技術的には余裕です。

 

どうせグッド買っても

オールソールなんかやらないくせに・・。

 

 

デマ③はがれる

 

→そう簡単にはがれません。

簡単にはがれたらクレームもしくは

リコールです。

 

はがれないんですよ今の時代。

 

GUでも1000円のパンプスでも

修理屋さんのYouTubeみてください。

思った以上にはがす過程は苦労されてます。

 

私も現役時代苦労しましたし

GUのセメント製法の革靴に至っては

たぶんはがすと靴自体が分解するほど

つよくくっついています。

 

ただ、縫っている方が安全ですし

売り文句が増えるんです。

マジでそれだけの話ですよ?

 

パンプスでも革靴でも

8000~2万程度かけて

オールソールする予定がないなら

ムダに縫ってる靴なんか買うな!

 

セメント製法で仮に底がべろっと剥がれても

革とかゴムの底材が劣化していなければ

接着剤で張り付けるだけのリペアで復活します。

 

スニーカーやパンプスに多いですが

再接着なら両足で2000円ほど。

安いし確実。

 

グッドを売りにしてる靴だって

実質「セメント靴」って

めちゃくちゃ多いんですよ。

 

たとえば

・レッドウイング「アイリッシュセッター」。

【RED WING】 レッドウィング IRISH SETTER 6' MOC-TOE アイリッシュ セッター 6インチ モックトゥ 8875 (E) ORO RUSSET

 

グッドイヤー製法で有名ですが、

実際には「グッドイヤー+セメント製法」。

 

底を取りかえるときには

白いソールをはがして、接着で終了。

縫っているのは薄いミッドソールまでです。

 

 

・ダナーフィールド

Danner ダナー DANNER FIELD ダナーフィールド 日本正規品 ブーツ ゴアテックス ダナーライトのエントリーモデル D121003

 

「ステッチダウン+セメント製法」です。

底を取りかえるときには

黒いビブラムソールをはがして、接着で終了。

縫っているのは薄いミッドソールまで。

 

 

・クラークス「ワラビー」

https://image.rakuten.co.jp/cloudshoe/cabinet/clarks/wlmaple_01.jpg

クラークス オリジナルス ワラビー メンズ ローカット モカシン シューズ メープル スエード CLARKS ORIGINALS WALLABEE【送料無料】

 

「マッケイ製法+セメント製法」です。

縫っているのは薄いミッドソールまで。

貫通する必要がないんですよね。

 

 

デマ④雨が降ると、中まで濡れる

 

これは事実ですが、表現として最悪ですね!

どんな靴でも濡れますから。

 

ゴアテックスとかゴム長みたいな

完全防水の靴以外は、グッドだろうが

インジェクションだろうが濡れます。

 

それをことさら「セメントだけが」と表現するのは

ただショップのノルマとしてグッドとかゴアテックスを

売りたいだけ。

 

中まで濡れたら、乾かせばいいんです。

 

・・・

 

こんな感じで、「セメント靴=格安靴」とか

ほざいてる店員がいたら

回し蹴りのひとつくらい入れていいですよ。

 

つくっている側はもう

緊張感MAXで、「1ミリもずれないように・・」と

胃をキリキリさせながらつくってます。

 

くっつければいい靴って、裏をかえせば

「くっついたら終わり」ですから。

製造でもリペアでも、やり直しの文字はない。

 

 

昔つとめてた工場で

設計の師匠が言ってました。

「セメントが最強だよ・・」。

 

その工場グッドがメインで

マッケイもオパンケもカルフォルニアプラットも

こなしてたんですけどね。

一番強度が強いのはセメントでした。

 

結論ですが靴を買う時に

「こちらはグッドイヤー製法で

こちらはただのセメント製法です。

だから買うならグッドを」って言われたら

そのショップはやめた方がいいです。

 

買えなきゃ意味ありませんし

グッドでもマッケイでもステッチダウンでも

オールソールしなきゃ意味ありませんから。

 

 

本題終了!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

【今日のおすすめの1足】

 

あ、もちろんこれもセメント製法ですよ?

底剥がれはいまのところ

聞いたことがありませんが。

 

ガチで幅の広い方へ。

 

アシックス

「テクシーリュクス・ゴアテックス」

4E幅シリーズ。

 

17600円。

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4E幅ってなかなかいませんよ・・。

 

シニアになってくると横アーチが落ちて

開帳足になってくるので

どうしても「べちゃ足」にはなりますが

本当の4Eはなかなかいません。

 

しかしいるところにはいます。

 

4Eの方だとGUでも選べないし

高級靴はなお選べないし

そこまで求めてない、ってかたも多い。

だからテクシーリュクスです。

 

セメント製法ですが

これで数か月とかで底が剥がれてきたら

すごいことです。

 

体重のある方なら2年くらいたって

「革切れ」を起こす可能性はありますが

直りますしゴアテックスなんで

水は一切入ってきません。

 

 

※過去ご紹介した靴はこちらにまとめてあります。

シューフィッターこまつ のROOM

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

【おしらせ】

 

・9月の新宿フィッティング会、

受付中です!→フィッティング会

9月の日程はこちら。

 

22()、27(金)、29(

 

会場は今回もすべて新宿です。

 

時間帯も各日

11時 12時 13時 14時 15時 16時

ですのでご興味のある方はどうぞお気軽に~。

 

枠は埋まり次第リアルタイムで更新してますので

フィッティング会でチェックしてください。

先着順です。

 

お申し込みは

・HP→フィッティング会

・公式ライン→https://lin.ee/CK9Z29U

・フリーダイヤル 0120-886-553

から受け付けております。

 

きのうの発表どおり10月の日程も決まりました。

5()、8(火)、13()、

20、25(金)26

 

内容はすべて9月と同じです。

25(水)の正午から受付を開始します。

・HP・公式ライン・フリーダイヤル

どこからでも受付け可能ですので

しばらくお待ちください・・。

 

 

・ズーム相談

 

40分、モニター越しですが

マンツーマンでお足の特徴・合うお靴の

ご相談に乗ります。

 

30分・3300円で15歳以下の方限定の

「子育てキャンペーン」も5月にひきつづき

実施中。

 

受け付けは→足と靴の オンライン 相談

 

・あんまりしゃべるのが得意ではない方には

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1回5500円で文字数の制限はありません。

ライン相談→足と靴の オンライン 相談 

 

・お買い物フルアテンドは

こちらからどうぞ!→お買い物アテンド

10月までのご予約も承っております。

 

・・

 

それではまた明日!