毎日靴ブログ@元・靴設計士 兼 元・靴修理人 兼 現シューフィッター 兼 靴マニアの こまつです。

東京某所で靴修理やってました。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと毎日書いていきます。修理は9月で退職。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPはこちらhttps://sf-komatsu.com/

1639 カルフォルニア製法

 

おつかれさまです

こまつhttps://lin.ee/CK9Z29Uです。

 

雑学回です。

 

革靴が履かれなくなっていくと同時に

靴の底付けの製法も減っています。

 

・カルフォルニア・プラット製法

 

あたりが顕著ですね。

 

カルフォルニア製法?

なにそれおいしいの、って今

思ったでしょう?

 

正式には「カルフォルニア・プラット製法」で

略してプラット製法、とか呼ばれることも。

以下、プラットと呼びます。

 

特徴は「軽いこと」。

軽い、なんてもんじゃなく

爆軽です。

 

今でもスリッパはこの製法ですね。

あとで説明しますが

「つりこむ」必要がないので

工賃が安く済みます。

 

靴では本当に絶滅危惧種になりました。

ほとんど見かけませんが

SAYAは得意です。

SAYA/【プラット製法】本革サイドゴアブーツ

SAYA SAYA/【プラット製法】本革サイドゴアブーツ ラボキゴシ シューズ・靴 ブーツ ベージュ ブラウン【送料無料】

 

底周りがちょっと

変わってるでしょう?

SAYA/【プラット製法】本革サイドゴアブーツ

なんともいえない段差がありますよね。

 

図解するとこうなってます。

プラット製法

(出典:https://www.pansy.co.jp)

 

はいもうわかりませんね。

これたとえ実物の輪切りを手渡されても

よくわからないはずです。

 

厚底でクッションが必要で

かつおしゃれで軽さが必要だった時に

開発されました。

 

本当にアメリカのカルフォルニアで

開発されたらしいんでこの名前。

100年くらい前からの製法です。

 

・・・

 

ふつうアッパー(上の側)と底を

がしゃーんってくっつけるじゃないですか。

それでいいじゃないですか。

 

戦後まもなくはそれがよくなかった。

接着剤の性能もいまいちだし

縫い付けると無骨になる。

しかもどう頑張っても重い。

 

で、カルフォルニアの方は考えたんですね。

 

本体がある。

もうひとつ、お客さんには見せられないけど

スポンジがある。

 

今のスポンジほど見栄えが良くないし

「スポンジを見せる」って発想も

当時はなかったんでしょう。

 

本体とスポンジをうまくくっつけたい。

でも剥がれたらアウト。

→スポンジを革で隠せばいいじゃん!

 

これがプラット製法の由来です。

 

さらっと今文章で書きましたが

つくる方はもう・・・

ひとこと、「めんどくさい」。

 

スポンジを隠すテープも

厚いとシンプルに重いし

縫っても本体からパンクしてはがれるため

極限まで薄く「漉く」必要がある。

 

これを本体と寸分の狂いもなく

縫うわけなんですが

問題はここ。

 

どうしても手作業なんでずれる。

シワも寄る。

致命的なのは「つりこめない」。

 

靴なのに釣りこめないんです。

アッパーとテープと中敷きも

全部ぶち抜きで縫うしかないので

釣りこんだあとの微調整がききません。

 

胃が────────。

 

ふふっ

まだここからなんです。

 

アッパーにテープがくっついた様子は

写真ないのがもったいないんですが

クラゲそのものです。

 

今度はスポンジをくるむんですよ

手で。

あ、このスポンジが厚いので

100年前はそれが電車のプラットフォームに

見えたそうです。

 

・・どう見てもそうは思えないんですが

まあ、100年前ですから笑

 

餃子を包むようなものです。

テープも薄いし

スポンジも柔らかいんで

ワニの出番はあまりありません。

 

シワがよったら普通は熱ゴテとか

熱風でシワを伸ばすんですが

この場合スポンジが熱で収縮するんで

不可。

 

現場を想像してください。

 

フラストレーションがMAXまで高まり

しかし作業は遅々として進まず

不良品はバシバシはじかれる。

深夜をまわっても一向に見えてこないゴール。

 

胃があああ────────。

 

・・・

 

もう思い出すのをやめよう。

 

スリッパとかのプラット製法の

専門ラインがある工場は

たぶんもっと効率的にスムーズに

やってるはずです。たぶん。

 

しかも今は接着剤もはるかに進化して

スポンジもスニーカーの進化とともに

「見せる」ことができるようになりました。

 

どうでもいい話ですが

ひと昔前のアムラー的厚底時代は

プラット製法が多かった。

厚底部分が革(か合皮)で

巻かれてたじゃないですか。

 

巻かれてたじゃないですか、って言われても

えっそうだったのという答えが聞こえそうですが

工場では胃に穴の開いた職人と

安易に引き受けてしまった設計者(私だ)が

のたうちまわってたんですよ笑

 

軽いのはいいけど

ぶつけてテープに穴が開いても

リペアもほとんどできないし

書けば書くほど

淘汰されて良かった製法な気がしてきました。

 

セメント最高!

 

 

本題終了。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

【今日のおすすめの1足】

 

本題つづき。

とはいえプラット製法にしか出せない

ドレス寄りのカジュアル感、

スニーカーでは出せない優雅さは

たしかにあります!

 

今革靴でプラット製法だとほんとに

SAYAくらいじゃないでしょうか。

 

SAYA「Tストラップシューズ」。

 

27500円。

24春夏新作フラット本革プラット製法Tストラップシューズ/サヤ(SAYA)

24春夏新作フラット本革プラット製法Tストラップシューズ/サヤ(SAYA)

 

あ、念を押しておくと

若いころ胃に穴が空きそうになったブランドは

SAYAではありません!

誤解なきよう。

 

ここまで完成度が高くて

アッパーの材料もただの牛ではなく

キップ(子牛)。

超絶エレガントです。

 

さらに革テープも使わない技法なので

この場合、多少キズがついても

補修可能。

底もカカトもリペアできます。

 

グルカもいいですが

Tストラップもやっぱいつの時代も

いいもんですね。

 

 

 

 

※過去ご紹介した靴はこちらにまとめてあります。

シューフィッターこまつ のROOM

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

【おしらせ】

 

・新宿フィッティング会の日程を

急遽ふやしました。

 

こちらの枠が空いています。

 

29日(

11時 12時 13時 14時 15時 16時

30日(

11時 12時 13時 14時 15時 16時

 

フィッティング会では

・2枠以上連続ご予約

・スニーカー・紳士靴・シニア靴・子供靴限定

という条件つきではありますが、

私がショップまでお客様と一緒にうかがって

お靴を選ぶ、というサービスもやってます。

話が早くて好評です!→ 新宿プチアテンド

 

お申込み方法は簡単:

ホームページの「お問い合わせ」に

お問い合わせ 

・お名前

・希望日とお時間

・メモ程度でいいので

 ざっくりした相談内容

をお書きください。

 

お振込み先をご返信いたします

 

ご予約から2~3日を目安に

お振込みをお願いいたします

 

ご入金が確認できた時点で

こちらから確認メールをさせいていただきます

 

以上!

 

ご予約は公式ラインからも便利です。

チャット機能でもご予約可能。

https://lin.ee/CK9Z29U

 

公式ラインのチャット欄も

めっちゃ気軽に利用しちゃってください。

キーボードのマークをタップすると

すぐ文章が打ち込めます。

 

7月もフルアテンド中心となります。

フィッティング会の開催自体が未定なので

迷っている方は6月中にぜひ!

 

・ズーム相談はかわらず年中

受け付けています。

最近フル回転です。

ありがとうございます!

 

40分・6600円でモニター越しですが

マンツーマンでお足の特徴・合うお靴の

ご相談に乗ります。

 

30分・3300円で15歳以下の方限定の

「子育てキャンペーン」も5月にひきつづき

実施中。

 

受け付けは①HP→メール相談

もしくは②公式ラインのチャットにて。

 

・あんまりしゃべるのが得意ではない方には

こちらがおすすめ。

メール相談/ライン相談。

1回5500円で文字数の制限はありません。

メール→メール相談

ライン→https://lin.ee/CK9Z29U

 

・お買い物フルアテンドは

こちらからどうぞ!→訪問サービス 

7月のご予約も承っております。

 

・・

 

それではまた明日!