ケツを割られたいか。
物騒な発言で失礼。
こまつ@shoes_komatsuです。
さあ今日もマニアックな話題でいきましょう。
〇革靴には「ケツ」がある。
こんなのとか
こんなのとか。
カカトの縫い目ですね。
専門用語で
「縫い割り」といいます。
工場の中では
たぶん今でも
「ケツ」って呼んでるはず。
大量生産のとき
この縫い割りがまんなかからずれてると
「おい!ケツずれてるよ💢!」と
工場で怒号が鳴り響きます(マジ)。
「ケツ」がある理由は、
カカトにカーブがあるから。
2次元の革を
立体的な3次元にしようとすると
曲線を縫い合わせることになる。
型紙でみてみようか。
どっちも曲線でしょ。
これを縫い合わせると
アッパーの段階でかなり立体的な
カカトができあがる。
スニーカーにこれがないのは
そこまで立体的にしなくても
スポンジでフィットするから。
〇ケツは、弱い
しかし「縫い合わせる」ってことは
人間の手術でいえば
皮膚と皮膚の縫合。
元気な部分の一枚革にくらべると
段違いでよわい。
カカトを踏みつぶしてパンクしたこと
あるでしょ?
対策としての基本①
「割り縫い」
このケツには
サイドにそれぞれ1本ずつ
ステッチが入ってますね。
これを「割縫い(わりぬい)」といいます。
「縫い割り」とごっちゃになりますが
まったくちがうものです。
ケツ縫い割りをしたあと
裏からナイロンの補強テープを貼って
そこにミシンをかける。
めちゃくちゃ強いです。
ただしミシンは布とちがって
「革を切り裂きながら」縫うので
生半可な革ではできません。
「割縫い」があったら
強力でクオリティの高い
革の証拠。
ナイロンテープがなかった時代は
余分な革を当てていましたが
革も薄いと弱い。
なので豪華にも
シルク(!)の布を
あてて塗っていました。
よって割縫いのことを
今でも英語では
「silked seam」と呼びます(マジ)。
対策としての基本②
〇「市革」(いちかわ)
これがマニアにはたまりませんね。
私もマニアです。
やっぱケツが割れるって
痛々しいじゃないですか。
まあ・・・最初から割れてはいるけど。
靴も服もそうですが
パーツの断面ってどこから裂ける?
必ず端っこからでしょ?
なので靴の場合
「裂け止め」にいろんな方法が
歴史的に試されてきました。
結果
生き残ったのが
「ステイ(stay)」です。
しごくシンプルな理論で
「端っこに革当てればいいっしょ」
ってことです。
大正解。
そして日本ではステイのことを
「市革」もしくは「イチ」と呼ぶ。
由来は知りません。。。
・とにかく丈夫な「ボーイチ」
(たぶん「棒市」)
うん。
なにも言うことありませんね。
端っこもガードできるし
縫い割りもガードできる
最強の市革です。
ひと時代まえ
アーミーシューズや
安全靴にはこれが採用されてました。
ただ好き嫌いが分かれるので
こんな派生形もあります。
・とりあえずギザギザにしてみる
うん。
素直。
ちなみにこれは
トリッカーズのモンキーブーツ。
これとか・・・
個人的に好きなのは
「フィッシュテイル」。
だいぶ無理がありますが
魚っぽいでしょ。
むかーし流行ったんですって。
今はほとんど見かけませんね。
ただのボーイチより
やや遊び心があって美しい。
写真のは私物のカントリーです。
こわそうと思っても
こわせないカントリーにも
「フィッシュテイル」のボーイチ。
納得。
・エレガントを追求した「片市(かたいち)」
これです。
縫い割りの先端が
内側に流れてるでしょう?
これも強い。
ただし型紙がめんどい!
製甲(縫製)もめんどい!
曲線のラインは10円玉が黄金比!
(※個人の感想です)
だから高級靴は
のきなみこのスタイル。
英語だと「dogtail」
=犬のしっぽですね
本当にどーでもいいことを書きます。
20年前のリーガ〇では
かたくなにこのスタイルを
「ドッグイヤー」と呼んでました。
仕様書にも
「ドッグイヤー」って書かないと
ボツられたのはいい思い出。
犬の耳じゃなくて
どっちかていうと
「怒った猫の耳じゃねえ?」
とは言えませんでしたね。
・トリはこれ「ちょぼイチ」
地味に一番コストかかってます(笑)。
アッパーと同じ革をうすく漉いて
ここで縫い返して
ぐるっと内側にまるめこみ
ライニングと同時に縫う。
クソめんどくさい。
しかも呼び名が
「ちょぼイチ」だけじゃなく
「チョロイチ」
「チョビちゃん」
「チョコイチ」など
可愛がられている感と
若干…舐められている感満載ですw
うん・・・・
まあ・・・・
しかたないよね・・・。
小さいもん。。。
〇イチがなければ不良品!
あえてさきに例外を。
・婦人靴(そこまで負荷がかからない)
・ワークブーツ(履き口に負荷がかからない)
・スニーカー(同)
だからこんなのは言語道断。
コールハーンの一部のモデル。
ぶっちゃけこれ。
もれなくこうなる。
_人人人人人人_
>ケツが裂ける<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
あたりまえじゃん・・・。
ちなみにこの持ち主、
履いて2回でこうなった。
よく2回持ったな・・・・。
ケツをなめるからこうなるのだ。
こんなの「切れ痔」だぞ?
絶対なりたくないでしょ。
このお客さんには
「あとからちょぼイチ」(両足4400円)で
直しました。
高くついたね────☆。
本題終了。
・・・・・・・・・・・・・・・
〇おまけの例外
・フルハンドメイド
手で釣る場合、
「シームレス」という技があります。
素材と時間と技術で
ケツが存在しません。
・アウトドアブーツ
これも革が分厚いのと
足入れのしやすさから
ケツがあまり要りません。
私物のダナーフィールド。
ある程度カカトがストレートじゃないと
脱着でイライラする。
しかもきちんと紐を締め上げないといけないので
(いいことです)
ヒールカーブがストレートでも
なんの支障もない。
ん?
おっと・・・??
メンズサイズ
全サイズ
復活してるじゃん!
【今日のおすすめの1足】
ダナーフィールド「黒」。
27500円。
★★2022/5/25再入荷★★【国内正規品】ダナーフィールド DANNER FIELD BLACK/BLACK ブラック D121003 ブーツ boots
マジか・・・。
あと2か月はかかると予想してた・・。
私が履いてもう5年目か。
どこも壊れてないし
なんなら靴紐さえ一度も取り替えてない(!)
かなりヘビーに使いたおしてですよ?
個人的に何万回も断言しますが
5万円のダナー「ライト」と
まったく遜色ありません。
それだけ。
台風どんとこい。
雪道どんとこい。
キャンプ・BBQどんとこい。
これは特報です。
楽天スーパーセール以上にね。
かといって安定供給されるかは
微妙でしょう。
だってモノがいいんだもん。
2~3000円くらいは
いつ値上げされてもおかしくない。
それでも充分すぎるくらい
安いんですけどね。。。
・・・・・・・・・・・・・・・
それではまた明日!