シューフィッターこまつ@毎日靴ブログ

東京某所で靴修理やってました。イギリスのノーサンプトンで靴のあれやこれやを学んで、20代の頃10年間靴の設計の世界にいました。30代からリペアの世界へ。靴フェチではありませんが、革靴からスニーカーまで、高いのから安いのまで、めったやたらと毎日書いていきます。修理は9月で退職。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。HPはこちらhttps://sf-komatsu.com/

145 ジョンロブの話(実体験@ロンドン)。

こんにちは。

靴修理人 兼 シューフィッタ― 兼 靴マニアのコマツです。

ジョンロブ。

世界最高の紳士靴のブランドです。

私の尊敬するメンタリストDaiGoさんも

既成靴を一時期愛用されてたようです。

ロンドンとパリにありますが、

ロンドンはオーダーメイド専門。

パリはエルメスが資本を出して

既成靴をつくっています。

で。

今日はロンドンのほうの話です。

以後、実話です。

1999年から1年ほど、

私はノーサンプトンの靴学校に通ってました。

ロンドンからバスで2時間くらいです。

なんで、週末はロンドンをうろうろ目的もなく

放浪するのがめちゃくちゃ楽しかった。

秋ぐらいに、

やっぱり一度はジョンロブに行かねば!と思って

訪問したんです。

中はこんなかんじ。

山下大輔 Weblog Version John Lobb in London(ロンドンのジョン・ロブ)

ザ・大英帝国

で、おそるおそるドアを開けると、

いきなり3メートルくらい奥のデスクに

社長のジョン・ハンター・ロブさんが

いらっしゃったんです。

フロント(?)にぽつん・・て感じで、

ばしっとスーツ着て立ってました。

細身にメガネが印象的でした。

びびりましたね。

いきなりかよ、と度肝ぬかれました。

こっちは貧乏丸出しのアジアの若造ですし、

ショップに入れるかどうかも知らずにアポなしでしたから。

でもハンターさんは慣れた感じで

めちゃくちゃ気さくに「学生さんかい?」と

迎え入れてくれました。

今なら「客だが?」と冗談の一発でもかませますが

20歳そこそこの若造は

「はい!学生です!コマツと申します!

今日は!いきなりですが!

あこがれの!ジョンロブを!拝見したく!

アポなしですみません!あと!ハンターさんに!

会えて!うれしいです!」

みたいなことをカチコチにかたまりながら

伝えました。

ハンターさんはヒマだったのか、

王者の余裕だったのかはわかりませんが、

写真NGを条件に、ノリノリで小一時間

マンツーマンで工房を地下から2階まで

案内してくれました(!)。

この体験は・・今でも冷や汗が出ます。

その日はちょっと遅いランチタイムだったようで

職人さんはほとんど出払っていました。

「え?ハンターさんはランチどうするんですか?」

と聞いたら、一言、

「・・・留守番(悲)。」

もうこの時点でちょっと笑いのツボに

スイッチがはいりましたが

こらえました。

「日本人もひとりいるんだけどねー」とか

言いながら、デモンストレーションも交えて

各セクションを案内して頂きました。

それだけでも感激だったんですが、

ひととおりツアーが終わって、

フロントに戻ってきたハンターさんが

なんと愚痴りはじめたんです(笑)。

たしか話の流れ的に、好奇心のままに

「オーダーなら、どんな靴もつくるんですか?」

みたいなバカな質問をしたところ、

おおーーーーーーきなため息とともに、

「つくるよー。たとえばこれみたいに。

と言って、目の前に

納品直前の靴をみせてくれました。

・・・・え?

(グッチ・・・ですよね?

え?パクリ?イングリッシュジョーク?)

と言葉には出さなかったものの、

表情でわかったのか、ハンターさんは

こういうのはグッチでつくればよくない(怒)

古いつきあいの息子さんの

オーダーだからことわれないけど・・

みんな知らないと思うけど、

こんなのまで・・つくってるんだよ(涙)。

あ、写真は絶対とらないでね。

このビット(金具)もわざわざつくったんだけど、

意外とこういう無茶ぶりが多いんだよ・・

グッチのロゴも入れてあげようかと

本気で思ったけどね」

と、そのお客のカルテまで持ってきて

首をふりふり、悲しそうに微笑みました。

たしかに、中敷きにはジョンロブの刻印がありました。

ハンターさん、あのときはごめん。

緊張の糸が切れて爆笑しちゃった。

でも、ハンターさんも爆笑してたよね。

でも、個人情報の漏洩はやばいっすよ。

あのときの顧客の名前、数年前ネットで調べて

「・・・・・!!」とビビりましたから。

20年たったけど、今でも元気かなー。

以上、すべて実話です。

それではまた明日!