こんちわ。
靴修理人 兼 シューフィッター 兼 靴マニアです。
おとといは終戦記念日でしたね。
私は仕事だったんですが、
家に帰ってから録画した
全国戦没者追悼式 を座してみました。
天皇陛下のお言葉もしっかり拝聴しました。
で。
やっぱり職業病ですので、
陛下の靴をみちゃうんです。
しかも靴の裏。
スローだとよくわかるんですが、
いわゆるつるんとした、すべり止めもついてない
ザ・クラッシックな革底です。
ただ、ヒールだけは全面ゴムでした。
ここに陛下の気配りがぎゅぎゅっと
つまっているんです!
こんなかんじ。(イメージ)
「いやいや、ふつうヒールってゴムでしょ」
って思うでしょ?
ちがうんすよ。
ふつう、というかクラシックな革底のカカトは
こうです。(写真はチャーチ)
↑こういうヒールが一般的です。
昔ながらのこのヒールのことを
「クサビ型」とか「ダヴヒール」とか
呼びかたはいろいろありますが、ようは
「革」と「かなり硬い」ゴムのコンビです。
陛下の靴をつくっている大塚製靴ですら
高級ラインはこのパターンです。
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これ、みためはきれいなんですが、
説明するまでもなく
めちゃくちゃ滑るんです。
革は当然すべるし、ゴムの部分も耐久性よりも
見た目の美しさを優先するので、
グリップ力はほぼゼロです。
ただし、高級革靴ならではの、歩いた時に
「カツ―ン」となる靴音。
あれはめちゃくちゃきれいに鳴ります。
村上龍のなんかの小説に出てきた
「上質なイタリア靴は、歩くとガラスのような
音がする」
という表現がぴったりです。見事です。
話が360度かわりますが、
「革底がすべる」ということで
ハーフラバーを貼られるお客さんが毎日みえますが、
(↑こんなふうに)
こちらも商売なのでもちろんやりますが、
実は・・
本当は・・
前底にゴムを貼るより、
「革ヒールをゴムヒールにとりかえる」
方が全然すべりません。あと安い。
この表面のパーツをはがして、
こういう全面ゴムにかえるだけです。
これだけで滑りません。
だって考えてみてください。
誰でも歩くとき「カカトから」着地するでしょ?
革ヒールだと、もうこの時点で滑っちゃうんです。
で、すべったのを次のアクションの
前足で着地するときにハーフラバーで
ブレーキかけるんです。
そんなの全然ムダ。
ゴムのヒールだと、着地の時点でグリップしちゃうので、
前底はつるつるでも実は関係ない。
んです。
100歩ゆずって
新品の状態ならコンクリートの階段では
気をつけた方がいいかもしれません。
さて。
陛下の話にもどりますが、
お怪我もそうですし、なにがあっても
大事な場面ですべったりこけたりできませんよね。
あと音。
厳粛な場で、歩くたびに
カツ・・カツ・・
て鳴っちゃ、威圧的に感じられません?
想像ですが、というか確信ですが、
陛下はたぶんそのあたりにも
気を配われていると思うんです。
もちろんマイクの関係もおおいにありますが
足音、聞こえないでしょう?
加えて、物持ちの良い陛下のことなので
当然この靴もこのあとヘビーユーズされるはずです。
宮廷内でも履かれるでしょう。
木の床もゴムのヒールならキズがつきません。
もちろん靴底ぜんぶがゴム底なら安全ではありますが
厳粛な場には合いませんよね。
ちなみに上皇陛下の場合は、
かなり前から全面ゴムのソール仕様になっており、
「おおっ」と思うと同時に
素人には察しさせない大塚製靴の技術にも
感服しました。
テニスの時にはニューバランスを履かれており、
ちがう意味で「おおっ」と思いましたが(笑)。
それではまた明日!